インタビュー
「株式会社 木村板金工業」

代表取締役社長 木村 孝貴

従業員さん達に伝えていること

経営者として、最初にお聞きした芯の部分と原価と利益とを大切にして、今も実行されているのですが、従業員さんやパートさん含め、色々な働き方をされている皆様には、どのようにお伝えされているのでしょうか。

 同じことを伝えてますよ。財務なんかの無駄とか、釘を無駄にするなとか。
その無駄にしないっていうところが、私の原価管理に繋がってきてますね。
余った材料でも、これで何が作るんじゃないかって。10㎝幅くらいのものまでは使いますね。普通だったら捨てちゃうんじゃないかな。
そういう会社もあると思うけど、うちでは絶対に捨てないで、何が使えるんじゃないのかっていう材料は使ってます。だから、あまり鉄くずみたいなのは出ない。板金クズの捨て場もあるんだけど、そんなでかいのは捨ててないでしょ。

今となってはエコやSDGsといった言葉ありますが、そんな言葉がない時代から無駄にしないという文化を築いて来られたんですね。

 材料も時間も無駄にしない。
これは経営者として当たり前のことで、どんな大企業も本体もそうだし、その下請けさんまで、全部で無駄を出さないように考えられてる。大手になればなるほど原価管理は厳しいですよ。コストダウンとか。だから大企業と呼ばれる会社になっていったのであって、意外と中小企業の方がやりやすかったりするんですよね。
だから、何をしたら良いか分からない経営者は、大企業の真似をしたらいいと思いますよ。小さな会社であっても、大企業がやってることを取り入れて、やってみたら良い会社が作れると思いますよ。 あれは大企業がやるもの、じゃなくて、中手企業の方がよっぽどやりやすいし、効果もてきめんに表れる。

もったいない、もそうですね。先ほどのムダと一緒で、会社の中にある、もったいない、ムダは何なのか。なぜ、を何回も繰り返しなさいっていうのも、大企業でやってることですけれども、中小企業でも同じですよね。
そこを従業員さんにも大切に思っていただいて、やすらぎという言葉はぴんとこなくても、一つのムダをなくすことはできる。それが実はやすらぎにつながってた。そういうところへ派生していく言葉ですね。
材料のムダとか時間のムダとか、そういった分かりやすいところからまず始めて。その経験を積んでいくことで、やすらぎって何だ、創造って何だ、というところも徐々に理解していかれるのだと思います。

 だから原価管理もあるけども、それに加えて時間管理。時間管理もしっかりやるようになって、自分の休みとか休日とかね、家に帰ってからの自分の時間を、従業員さんみんな大事にしていますよ。やっぱり従業員さんの自主性なくやってると、どうしてもダラダラになっちゃって、みんなでできたら良いね、なんてやってると、やすらぎも何も分からなくなっちゃうよね。
そういう自主性とか時間管理とかってのも勉強なんですよね。職人としての。技術だけじゃなくて、いろんな広い意味での勉強をしてくれるようになると、それがこんど現場に行って役に立つと思うんですよ。
だから、いろんな世間話は毎日の朝礼とかで結構しますよ。仕事の話もしますけど、半分以上はいろんな世間で起きている事とか、そんな話です。
上から言われてうっとうしいなとか思うかも知れないけど、それはまだまだチャレンジ精神が足りないからで、いったん与えられたものを受け入れてみて、どうやるか考えたら楽しいんじゃないかな。うちの従業員さんもそうなんだけど、やっぱり出来ている人はプレッシャーじゃなくて、現場はこうだからこうやって、って言ったら自分で想像してやってくるよね。私が1から10までこうですよって言えるわけもないし、言ったら職人さんみんないなくなっちゃうから。
従業員さんには勉強する機会や、考えるチャンスを与え続けることが、会社の進化につながっていくんですよ。

最初は細かいな、うっとおしいなと思いながらも、実行していくうちに勉強する心づもりであったり、そのための時間が生まれてきますもんね。そして勉強することによって、勉強の大切さが理解できて。また効率化されて時間が生まれる。勉強する。
この循環が生まれると、自分達でやすらぎをみつけて実現していってくれる。経営者としては、そこまでいってもらえれば、いやしめしめと、後はもううんうんって見ているだけで大丈夫。

そこを両方向からバックアップすることが大切なのですが、指示した通りにやれ、俺が指示するまで待っておけ、と言ってしまう方が今は多いですね。

 それは大きな間違いだね。
上に立って指示する人は、自分だったらどうかとか、彼はその時どうだったのかとか、その時の状況を考えないとダメですよ。みんなやる気になって技術者になろうと思ってやってるんだから、最初は失敗して当たり前。
失敗しても、次はそれをどう回避するかという能力を身につけるのも技術の一つ。

そこを一緒に考えてあげるのも良いかも知れませんね。
あの時どうしたら良かった?お前はどう思ってる?
答えは持ってるんですけど、それを相手に考えさせて言わす。
自分たちでやってしまう人は、それができないんでしょうね。どうすれば良かったのか、自分の答えを言ってしまって、これができないのであれば触るなって言ってしまう。

 失敗なくして成功はない。失敗経験をさせるってこと。
先輩になると失敗イコール悪だと思ってるから、失敗させないように指示を出しすぎちゃう。でも、考えさせてやらせてみて、そこで失敗したら、それを先輩が責任とってあげて。何で失敗したのかっていうのを考えさせて、じゃあ回避するにはどうしたらいいんだろうっていうのを今度指示してやればいい。
それをしないと成長もしないし、言われたことだけやっていてもね。うちの会社でも失敗はいっぱいありますよ。でもそれを認めてやることが大切です。

今は特に、失敗するのがダメと言われて育ってきているので、失敗したら怒られる、そうすると、失敗して怒られるぐらいなら言われたことだけやっておこう、になってしまう。

 失敗もきちんと報告してもらって、それをちゃんと会議して手直してね。それでいいじゃないですか。それが失敗した人の為になって、経験値として積み重なっていくんだから。
みんながみんな成功体験だけで成長しちゃうから。それ成長というのかって話しなんだけどね。
会社もそうですよ。良い時ばかりじゃなく、やっぱり苦しい時とか、失敗とかありますよ。それを改善しながら経営してる。

経営判断として、あの時どう采配すれば良かったのか、ということを考えて、またチャレンジしてやってみる。失敗したらどうしよう、ではなく、無駄にはしないでおこうとか、お客様はどう思っていたのか、常に意識することが一番大事な部分ですね。
自由に発想してもらうんだけれど、そこに大切なことを植えつけていく。
これがなかなか難しい、と言うか、どこまで言ってあげたら良いのか。
言いすぎてもダメだし。

 そうね、言いすぎてもダメっていうのは、その職人さんの資質もあるので、この職人さんならこのくらいまで言っても良いよなとか、この職人さんは神経質っぽいから落ち込んじゃうかなとかあるから、それは職人さんを見てケースバイケースで対応していかないといけない。そこは、お客様の声を聞くのと同じく、従業員さんの思いを聞いて、この人にはこうだからこうしようとか、そういうところを整えていくのも、経営者の仕事ですね。
だから、現場の職人さんの失敗経験と同じく、経営者としての経営判断の失敗経験がありますよ。でも、経営者としての失敗経験というのも従業員さんと同じく、失敗したら会議をして、どう修正していったらいいか、いい経験としてね。
社長だけ、なんでもかんでも完璧だなんて、あるわけないんですよね。

従業員さん達が技術者として成長していくのと同じく、経営者も経営技術を磨いていく事ですね。それが従業員さんを大切にすることだと。

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