インタビュー
「株式会社 木村板金工業」

代表取締役社長 木村 孝貴

企業理念・経営方針

ここで、当時から(20年間)変わらず話し続けられておられる、企業理念・経営方針についてお聞きしたいと思います。

 そうですね。
やっぱり会社って生き物なんで、何か信念を持たないと、人間もそうなんですけど、信念を会社に与えないと会社とか組織って動いていかないと思うんですよ。
そこに企業理念というものがある訳なんですけど、やっぱり私はこの建設業で仕事をするに当たって、皆さんが安心して住める住まいでないといけない、という強い思いがあるので、『安らぎを・・・』という言葉をまず企業理念のトップに入れました。
次は従業員さん。
従業員さんもやっぱりのびのびと仕事をしてもらわなくちゃいけないと思うんです。会社っていうのは、社長だけでは何もできないじゃないですか。やっぱり従業員さんがいて、やってくれるので存在し続けられる。
ただ会社っていうのは伸びていかなくちゃいけない。
伸びていくというか、進化しなくちゃいけない。
それは、会社イコール従業員さんもそうなので。
だから『やすらぎを創造するチャレンジ企業』という企業理念を作りました。
チャレンジして進化していく会社、という企業理念ですね。

まず『やすらぎ』ですね。それを従業員さんも一緒になって作っていこうよと。
次に、ISOもそうでしたけれど『チャレンジ』ですね。
"社長の中でも大切にしておられる『チャレンジ』ですが、今の時代、チャレンジすることに臆病な社会になっているなと感じます。
チャレンジするのはやっぱり怖いと思います。でもそれを必要以上に怖がるような、それを(失敗することも含めて)許さないような、そんな社会になっているのかなっていう気がします。十のうち七つ八つは失敗をするんだろうって思えれば良いのですが。

 私は新しいことが好きで、新しいことイコールいろんなアンテナをはって勉強する。そういう所があったら行って勉強する。
そこで勉強したことを、会社へ戻ってきて従業員さんにフィードバックして、それが今度はお客様のところへ行く、と思っているので、とにかく勉強/チャレンジは欠かすことはできません。
やっぱりチャレンジするには勇気も必要だと思いますよ。誰でもできる訳じゃないし、出来なかったからといって責める訳ではない。人間って今の状況にいるのが一番安心できるんですよ。

 一歩踏み出すことはなかなか勇気のいること。
それでも、その一歩を踏み出さなきゃね、その次がない。
私も父親として子供たちを見ていると、子供って毎日がチャレンジなんだよね。子供たち自身はチャレンジしようとは思ってなくても、そうやって日々何かを勉強して、大きくなって。でも、大人になるにつれて守りに入っちゃうんだよね。何でかね。
だから子供ってすごいんですよ。大人はそれを見習わないと駄目ですね。

チャレンジ、してないですね。反省します。
子供のころは無意識にできていたことが、徐々にできなくなって、徐々に守りの意識になってしまっていますね。
だからこそ、あえて意識するために理念として掲げて、チャレンジしていこうとされているんですね。

 やっぱり意識付けっていうのは大事で、文書として『やすらぎを創造するチャレンジ企業』って書いておけば、いつも目にするじゃん。
そうじゃないと人間は今の状況を守りたがる、イコール伸びていかなくなる。
だからこぞ守りたがる自分を打破していくには、まず一歩前に出てね、怖がらずね。
投資する。勉強する。
それを今度はお客様にフィードバックしてお客様に喜んでもらわないと。

どうやってお客様に喜んでもらおうかって考えるのも挑戦ですよね。
昨日とと同じことをやっていても、喜んではくれるんですけれども、もっと喜んでもらうには次の挑戦が必要で、次のチャレンジ、新しい発想が必要。
そのためにはベースとなるような勉強を常にしておかないといけない、ということですね。

 人間って満足して終わりじゃないんですよね。今日のステーキより明日はもうちょっとランク上のものを食べたい。それが当たり前になって、次もっと良いもの食べたくなる、それと一緒。
やっぱりお客様の満足にもキリがないんです。

お客様はもっとその次へ、次へ、ということを求めていらっしゃるのに、我々が守りに入って、その場で留まっていると、どんどんお客様との意識が離れていってしまう。
意外と商売の原点っていうのはそういうところなのかも知れませんね。
そんな開きてしまった、伸びきってしまった、市場やお客様との関係が、会社を衰退させることにつながってしまうのでしょうね。
だからこそ、そこに挑戦をして、追いつき追い越していこうという、創業当初からのお考えが支えとなって、ISOとの出会いにつながってきたのですね。
それ以外にも、社長が『やすらぎ』『チャレンジ』というキーワードに至った、何かきっかけのようなものがあったのでしょうか。

 たぶん私が、社長として、自分が欲していたことなんだろうね。
今考えてみたら、やすらぎが欲しいと、そのために何か勉強してチャレンジしていきたいと、そういう意思が自分の中にあったんでしょうね。それを自分の言葉として並べたんだけど、やぱりそれが根本だよね、というのが作ってから分かってきたかな。
やっぱり経営者って孤独なもんですよ。
でも、勉強はしていかなくちゃいけないし、お客様の所に行って孤独だなんて言うこともできないし。お客様の前ではやっぱり自分の持っている知識や技能を提供してね、喜んでいただきたいと思うしね。

すると、何か大きな失敗があった、大きな成功があった拍子に出てきたキーワード、という訳ではなく、社長の心のどこかにあったものを吐き出された企業理念、という感じですか。

 そうですね。
経営者としての勉強をしてた時は、いろんな文言がキーワードとして頭の中に入ってくるわけですよ。でも、それって本物じゃないんですよね。読んで見て、世の中にはこういうキーワードが飛んで歩いてるっていうのはあっても、本当に自分で企業理念として作るには、自分の信念・本心から出てきた言葉じゃないとダメです。

そうですね。
いろんな会社で経営理念を見直しましょう、という会を開いても、どこかの本に書いてあったような、キレイな、耳障りの良い言葉が並んでるんですよね。でも会が終わった途端に従業員さんに対して「何だこの馬鹿野郎!」なんて。
本当にがっかりします。

 往々にしてそういうのはあるんですよね。
しっかり勉強して本を読んで出てきた言葉でも、それは本当に自分の会社にあってるのか、本当に自分の信念に合っているのか。何度も何度も口にしてみて、自分の中から沸き上がる大切にしていることでないとダメですね。

 うちの理念の場合は「やすらぎを創造するチャレンジ企業」って、キーワードは三つ「やすらぎ」と「創造」と「チャレンジ」なんだけど、じゃあ「やすらぎ」とは何なのか、「創造」とは、「チャレンジ」って。
この言葉の意味付けがしっかりしていないと、(私が求めている)みんながそれを使って、会社としてお客様に対して提供できないし、社長として従業員さんに「やすらぎ」を提供できないと思うんだよね。
「創造」にしたってそう。
従業員さんにはやっぱり勉強をしていただいて、いろんな自分なりの技術を習得していただいてね。そして、いろんな業務でも、やり方がこれが正しいってことはないはずなんだから、その地域に合った、その場所に合ったやり方があるんだから、臨機応変に「創造」する力が、また次の「チャレンジ」に繋がっていくんです。

「創造」というのは、もちろんモノ作りという意味の創造でもありますが、新しい技術であったり、新しい発想というのを取り入れていくことも「創造」だと思うので、それが、この先の「チャレンジ」するということにつながってくるんでしょうね。
出来合いのものを、今までと同じようにやるだけなら、ただの組み立て屋さんですもんね。
図面とか、写真とかでは表しきれない、そういう創造性とチャレンジ精神が必要なんですね。

 何年もやっているとそういう事を求められる場面にはたくさん出会いますから。
そのためにも、やっぱり勉強が必要ですね。

社長業をやられている中で、それが自らの腹の底から出てきた言葉であったとしても、時には理念が揺らぐ場面もあったかと思うのですが。

 毎日の仕事の中で、どこかにその葛藤というものはあります。
お客様が何を求めてるのか、自分はこうしたいんだけど、お客様はそこまで求めているのか。そういう葛藤は、やっぱりお客様から話を聞いて、その度合いもね、自分はここまでしたいんだけどって言っても分かってもらえないこともある。
でも、それは別に寂しいことじゃなくて、それがお客様が要求していること、欲していることであれば、よく話を聞くことが大切だと思います。

理念も一方的に理解しろって押し付けるのではなく、私はこう思ってる、会社としてこういう理念でやっている、と話した上で、お客様、あなたが考えていらっしゃることって、どういうことででしょうか、とお聞きする。
従業員さんに対しても同じ、皆さんが考えてることって何ですか、会社として一緒にやっていく以上、こういうことを大切にしてほしいんだけれども、と理念を掲げて。
その中に合致する部分があれば良いですし、合致する部分がなければ、いずれ離れていくでしょうし。
そういう決断をするにも勇気が必要ですね。

 そういう場面は、対会社、対お客様でもありますので、経営していく以上は理念に合わない人だったり、物件だったら、やっぱりそれは潔く勘弁願う。
それはそれでいいと思いますよね。

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